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チームトーク
学校では教えてくれない
人間社会を生き抜くための人生の基礎知識

6番目は「集団への帰属」です。


個人と集団
人間は大なり小なり集団に所属しています。
一番小さな集団は家族でしょう。
​(不幸にもそうならなかった方も稀にいらっしゃいますが一般的には)
生まれるとすぐに家族という集団に所属することになります。
やがて成長すると社会に出ていくことになります。
その第一歩は幼稚園・保育園でしょう。
成長するにしたがって小学校・中学校・高校・大学と進んでいきます。
やがては 就職して会社や地域の組織に所属することになります。
笑顔の赤ちゃん
幼稚園の風景
所属から帰属へ―帰属欲求

集団に所属していると 人間は不思議なことに 所属する集団に対する帰属意識が芽生えてきます。

「所属」と「帰属」は似た言葉ですが ニュアンスが異なります。

  • 所属は ある組織やグループにその一員として加わっていることを意味します。例えば「会社に所属している」という表現は 単にその会社のメンバーであることを指します。

  • 帰属は それだけでなく その組織やグループに自分が深く結びついているという心理的な意識や順応性を含みます。「会社への帰属意識が強い」という言葉は 心理的な安心感や愛着 そしてその組織と一体感を持っている状態を意味します。

つまり 所属は物理的または形式的な繋がりを指し 帰属は心の繋がりや結びつきを表す概念と言えるでしょう

 

所属する組織に帰属意識が生じる理由

所属していた集団に対して帰属意識が生まれるのは 人間の心理や社会的なニーズに基づいたいくつかの要因が作用するためです。

承認欲求と自己肯定感の充足

人間は「誰かに認められたい」「自分の存在価値を感じたい」という基本的な欲求を持っています。

集団の中で自分の意見が聞かれたり貢献が評価されたりすることで承認欲求が満たされ自己肯定感が高まります。

これが帰属意識につながります。

安心感と安全の確保

集団に所属することで物理的・精神的な安心感を得られます。

一人でいるよりも集団の中にいる方が危険から身を守りやすく困ったときに助け合えるという感覚が生まれます。

この安心感が帰属意識の基盤となります。

共通の目標や価値観の共有

同じ集団に所属する人々は多くの場合共通の目標や価値観を持っています。

これらを共有し共に達成しようと努力する過程で連帯感が生まれ一体感が深まります。

相互作用と人間関係の構築

集団の中で他のメンバーと交流し協力し合うことで信頼関係や友情が育まれます。

これらのポジティブな人間関係はその集団への愛着や帰属意識を強めます。

役割と貢献意識

集団の中で自分に与えられた役割を果たすことや集団の目標達成に貢献していると感じることは自身の存在意義を高め集団への貢献意欲を刺激します。

これが帰属意識を形成します。

ポジティブな経験の積み重ね

集団の中で楽しい経験成功体験困難を乗り越えた経験などを共有することはメンバー間の絆を深め集団へのポジティブな感情を育みます。

これが帰属意識の形成に大きく寄与します。

これらの要因が複雑に絡み合い単に形式的に「所属」している状態から心理的に「帰属」しているという感覚へと変化していくのです。

特に集団内で肯定的な経験を多くし個人のニーズが満たされるほど帰属意識は強固なものになります。

バレーボール・チーム、作戦会議
オールハンズイン

帰属意識による弊害

帰属意識は 組織や集団にとって多くのメリットをもたらしますが  過度に強すぎる場合や 特定の状況下では 問題点も生じ得ます。

主な問題点を 以下に挙げます。

同調圧力と多様性の喪失

帰属意識が強すぎると 「組織の方針に逆らえない」「皆と同じでなければならない」という同調圧力が生まれやすくなります。

異論や新しいアイデアが出にくくなり 組織全体の思考が硬直化する可能性があります。

結果として 多様な視点や意見が失われ イノベーションが阻害されることがあります。

変化への抵抗と適応力の低下

強い帰属意識は 現状維持への固執につながることがあります。「このやり方が一番だ」「これまでこれでうまくいってきた」という考えが先行し 外部環境の変化への適応が遅れる可能性があります。

特に変動性 不確実性 複雑性 曖昧性(VUCA)の時代においては 変化への柔軟な対応が求められるため 過度な帰属意識は組織の足を引っ張る要因となりえます。

内向き志向と閉鎖性

組織や集団への帰属意識が強すぎると 外部への関心が薄れ 内向きな思考に陥りがちです。

他の組織や業界からの情報 ベストプラクティスを取り入れにくくなり ガラパゴス化するリスクがあります。

新規参入者や異質な存在への排他的な態度につながることもあります。

不健全な競争や派閥の形成

集団内部での結束が強すぎるあまり 他の部署やグループとの間で不健全な競争意識が生まれたり 派閥が形成されたりすることがあります。

これにより 組織全体の協力体制が阻害され 連携が困難になることがあります。

個人の犠牲と燃え尽き症候群

組織への貢献を強く意識するあまり 個人のプライベートや健康を犠牲にして働く傾向が強まることがあります。

「組織のためなら無理をするのは当然」という感覚になり 過労やストレスによる燃え尽き症候群を引き起こすリスクがあります。

ワークライフバランスが崩れやすくなります。

批判的思考の欠如と不正の隠蔽

集団への忠誠心が強すぎると 組織の意思決定や行動に対して 批判的な視点を持つことが難しくなることがあります。

不正や不適切な行為が内部で発生した場合でも 「組織を守るため」という意識から 隠蔽しようとする心理が働く可能性があります。

依存と自己成長の停滞

個人が組織に過度に依存し 自己のアイデンティティや価値を組織の中にのみ見出すようになると 組織外での自己成長機会を逃す可能性があります。

組織を離れた際に 自分の存在意義を見失ってしまうといった問題が生じることもあります。

過剰な帰属意識が現代社会の課題を引き起こしている

これら過剰な帰属意識による弊害は

集団と集団の対立や個人の人権の迫害 文明社会発展の停滞 

といった現代社会における大きな課題とイコールだと言っても良いでしょう。

ロシアの旗を振っ
ストレスを感じた若者
間違った常識: 自分が所属(帰属)する集団を 1つ決めなければならない
世のなかの人たちを見てみると 大半の人が 自分の所属している集団に対する帰属意識がとても強いようで 私には 「人間は自分が所属(帰属)する集団を 1つ決めなければならないと勘違いしている」ように思えてなりません。

複数の集団に所属する自由

人間は複数の役割やアイデンティティを持つ存在です。

封建時代ならいざ知らず 現代社会においては(少なくとも日本では)どの集団に所属するかは個人の自由ですし 複数の集団に所属することを禁止されていることはありません。

一つの集団に完全に縛られる(帰属する)のではなく 複数の集団に関わる(所属する)ことは現代人には許されていることなのです。

むしろ 複数の集団に関わることによって 多様な視点を持ち 対話を通じて調和を探る余地が広がるのです。

「集団全体の規範を柔軟に捉える」「個の価値を尊重する」という姿勢を育むことが重要です。

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若い個人

「人間は自分が所属(帰属)する集団を1つ決めなければならないと勘違いしている」のは以下のような歴史的背景が人間の本能に深く刻み込まれているからです。

帰属欲求獲得の歴史

人間が集団に帰属したいという本能は 人類の進化の過程において 生存と繁栄に不可欠な戦略として形成されてきました。

初期の人類と環境適応(約数百万年前~):

身体的脆弱性:

人類は他の大型動物に比べて 身体的な強さや速さ 鋭い爪や牙といった武器を持っていませんでした。

単独で過酷な自然環境や肉食動物から身を守るのは非常に困難でした。

集団での生存戦略:

この身体的な脆弱性を補うため 人類は集団で生活し 協力することで生存確率を高めてきました。

集団で狩りを行い 食料を分け合い 子育てを共同で行い 外敵から身を守るという戦略が 個体の生存と種の繁栄に不可欠だったのです。

狩猟採集社会の形成(約200万年前~約1万年前):

小規模な集団:

狩猟採集社会では 数十人程度の小規模な集団(バンド)で移動しながら生活していました。

これは 食料の確保や移動の効率性を考えると 最適な集団サイズでした。

分業と協力: 狩猟や採集は 個々の能力や性別に応じた分業と協力が求められました。

例えば 男性は狩猟 女性は採集といった役割分担があり 獲物を捕らえたり 植物を集めたりする際には 集団での連携が不可欠でした。

情報の共有と学習:

集団で生活することで 危険な場所や食料のありかなどの情報を共有し 経験や知識を次世代に伝えることができました。

これは 個人の学習能力を補完し 集団全体の適応力を高める上で重要でした。

社会規範と秩序:

集団生活を円滑にするため 自然と社会規範やルールが形成されていきました。

裏切り者やルールを破る者には制裁が加えられることもあり 集団の秩序を維持することが個人の生存にも直結していました。

農耕社会への移行と集団の拡大(約1万年前~):

定住と食料生産の安定:

農耕の開始により 人類は定住生活を送るようになり 食料生産が安定しました。

これにより より大規模な集団を維持することが可能になりました。

集団規模の拡大:

狩猟採集社会の数十人規模から 農耕社会では数百人から数千人規模の村落や都市が形成されるようになりました。

集団が大きくなるにつれて より複雑な社会構造や組織が発展していきました。

新たな協力関係:

大規模な集団では 治水や防衛 宗教儀式など より高度な協力関係が求められるようになりました。

これにより 集団への帰属意識は 単なる生存のためだけでなく より大きな共同体の維持や発展にも寄与するようになりました。

脳と社会性の進化:

言語の発展:

集団内での複雑なコミュニケーションや情報共有は 言語の発展を促しました。

言語は 感情や思考を共有し 集団の結束を強める上で極めて重要な役割を果たしました。

共感と利他性:

集団で協力し合う中で 他者への共感や利他性といった感情が発達しました。

これは 集団全体の利益のために行動する個体を優遇し 結果的に集団の生存率を高めることにつながりました。

このように 人類は進化の過程で 集団に帰属し 協力することで 厳しい自然環境を生き抜き 繁栄してきました。

集団への帰属意識は 単なる生存戦略を超えて 自己のアイデンティティ形成や心理的な安心感 そして社会的なつながりという 人間にとって不可欠な要素として深く根付いていったと考えられます。

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茶葉を収穫

現代社会が直面する問題

現代社会は 前述した帰属意識による弊害が 集団どうしの対立の溝をますます深める結果になっています
  • 国家間対立
  • 宗教間対立
  • 政党間対立
  • 人種間対立
  • 先進国と発展途上国の対立
  • 富裕層と貧困層の対立
今 意識を変えなければ手遅れになる
歴史的に深く根付いていった 集団への帰属意識ですが
「人間は自分が所属(帰属)する集団を 1つ決めなければならない」という勘違いを

「一つの集団に完全に縛られる(帰属する)のではなく 複数の集団に関わる(所属する)ことが現代人には許されている」

という認識にたった今から入れ替えなければ 人類には取り返しのつかない結果が待っていることでしょう。

なぜなら人類は 対立した相手を一瞬にして滅ぼすことが出来る殺傷能力を持った兵器を手にしているからです。

モスクで祈ります
ハノイ旧市街のバイク(ベトナム
帰属意識を和らげる
帰属意識が強すぎることによる弊害を克服し 健康的で生産的な集団を築くために 以下のようなアプローチが考えられます。

1. 多様性と異論を奨励する文化の醸成

積極的な意見交換の促進:

会議で「異なる意見はないか?」と積極的に問いかけたり 匿名でのフィードバックの機会を設けたりするなど 率直な意見が出やすい場を作るべきです。

多様な人材の尊重と活用:

 性別 年齢 国籍 経験 価値観など 多様な背景を持つ人々を積極的に採用し それぞれの視点や強みが活かされる環境を整備しましょう。

多様な意見が尊重されることで 同調圧力を緩和できます。

心理的安全性の確保:

失敗や批判を恐れずに意見を言える 挑戦できる雰囲気を作ることが重要です。

「失敗は成功のもと」という考え方を共有し 非難ではなく学びを重視する文化を育てましょう。

2. 組織の目的と個人の成長目標の調和

共通の目的の再確認:

組織が何のために存在し 何を達成しようとしているのかを明確に伝え メンバー全員がその目的を理解し 共感できるようにすべきです。

個人のキャリアパス支援:

メンバーが組織内だけでなく 組織外でも通用するスキルや経験を積めるよう 研修機会の提供 ジョブローテーション メンター制度などを活用し 個人の成長を支援しましょう。

ワークライフバランスの推進:

過度な労働を奨励せず 休暇取得の促進 柔軟な働き方の導入など メンバーが私生活も充実させられるよう配慮することは 燃え尽き症候群の防止に繋がります。

3. オープンなコミュニケーションと透明性の向上

情報共有の徹底:

組織の方針 目標達成度 課題などをオープンに共有することで メンバーは組織全体を俯瞰し 自分の役割を客観的に認識できるようになります。

定期的な対話の機会:

上司と部下の1対1の面談(1on1)を定期的に実施し 個人の悩みやキャリアについて話し合う場を設けましょう。

建設的なフィードバック文化:

良い点だけでなく 改善すべき点についても 個人を尊重しながら具体的にフィードバックできる文化を育てるべきです。

 

4. 外部との交流と視点の導入

異業種交流やセミナー参加の推奨:

メンバーが外部の知識やトレンドに触れる機会を増やすことで 組織が内向きになるのを防ぎ 新しい視点やアイデアを取り入れやすくなります。

外部専門家の意見を取り入れる:

必要に応じて 組織外のコンサルタントや専門家から客観的な意見やアドバイスを求めることも有効です。

オープンイノベーションの推進:

他企業や研究機関との連携を模索し 外部のリソースや知識を活用することで 組織の閉鎖性を打破できます。

 

5. 健全な批判的思考の育成

「なぜ?」を問いかける習慣:

組織の決定や慣習に対して 「なぜそうなのか?」「より良い方法はないか?」と常に問いかける習慣をメンバーに奨励すべきです。

倫理観の醸成と教育:

不正や不適切な行為に対する認識を高め 個人の倫理観に基づいた行動を促すための研修や教育を定期的に行うべきです。

内部告発制度の整備も重要です。

上記アプローチをしているかを見極める

一番大切なことは あなたが所属している集団が

上記のようなアプローチを行っているか?

そのようなアプローチをリーダーが集団に対して指示しているか? 

を確認することです。

そうでないならば その集団に対しては せいぜい所属することに留めておいて 帰属することは控えたほうが良いでしょう。

​いつまでも帰属していると あなた自身が 集団圧力に苛まれることになるからです。

その集団/そのリーダーは信じるに値するか? を判断するのではなく

今 言っていること やっていることは正しいのか? を判断することが重要です。

神様のような完璧な人間などこの世には存在しません。

複数の集団 複数のリーダーの正しい部分に賛同しても良いのです。

自分の所属する集団の 間違っているところを弁護する必要はありません。

あなたが一つの集団に「帰属する」義務は無いのです。

小槌
レッドカード
学校では教えてくれない人間社会を生き抜くため基礎知識6番目の「集団への帰属」
についてお話してきました。
集団の理論に矛盾を感じた皆さんは 
いつまでも一つの集団にこだわって帰属することを早くやめて 複数の集団の正しい意見や考え方に賛同し​ 複数の集団に所属することによって見識を高め 集団間の対立のない社会で もっともっと楽に生きていただきたいと願っております。
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