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教育テキスト

工場の全体像の把握
(物と情報の流れ図)

ここではトヨタ生産方式でカイゼンを行っていくツールの一つである「物と情報の流れ図」の基礎について詳しく学びます​。

内容は下記の項目についてです。

このページで無料で学ぶことができます。

第1章:物と情報の流れ図の概要と目的

 1-1. 図解による工場構造の可視化

​ 1-2. 全体把握の必要性と目的

 1-3. 物と情報の流れ図から得られる気づきと効果

 1-4. 組織内の認識と理解の統一

第2章:生産リードタイムの理解と流れ図との関係

 2-1. リードタイムの定義と構成要素

 2-2. 停滞時間による工場体質の診断

 2-3. リードタイムが短い会社は儲かる会社

 2-4. リードタイムに潜むムダの種類

 2-5. リードタイムとの連動による物と情報の流れ図の意義

第3章:物と情報の流れ図の作成手順

 3-1. 工場内の工程を調べる

​ 3-2. 工程順に並べて描く

 3-3. 工程の前後に置かれている物を配置する

 3-4. (From)(To)を調べ矢印でつなぐ

 3-6. 情報を点線の矢印でつなぎ記述する

 3-7. 購入する原材料を記述する

 3-8. 生産リードタイムを流れ図の下に記入する

第4章:全体像の把握ができたら流れのカイゼンへ

 4-1. 物と情報の流れ図はカイゼンのための道具

 4-2. カイゼンの進め方と図の更新

 4-3. リードタイム短縮と儲かる構造

 4-4. 組織でカイゼンを進めるために

★無料パート

第1章
物と情報の流れ図の概要と目的

1-1. 図解による工場構造の可視化

 

物と情報の流れ図(VSM:バリュー・ストリーム・マッピング)は 製品が顧客に届くまでの原材料の調達から 製造、出荷までの流れを可視化する トヨタ生産方式の「カイゼン」を進めるための基本ツールの一つです。

これにより ムダの発見や改善点の洗い出しを効率的に行えます。

物と情報の流れ図についてはたくさんのホームページがありますので 参考にしてみるのもよいでしょう。​

​●物と情報の流れ図の描き方へのリンク

この図は 工場内で物がどう流れ 情報がどう指示されているかを一枚にまとめることで 現場の構造と運用の実態を可視化します。

物の流れとは 原材料や部品がどの工程を通って製品になるかという物理的な移動です。

情報の流れとは 物を次工程に進めるための指示が どのタイミングで どのように出されているかという 物の流れを管理する動きです。

この二つの流れを同時に描くことで 工場の全体像が立体的に見えてきます。

工場全体を把握できている人は 現実にはほとんどいません。

担当者は自分の工程には詳しくても 他の工程や情報の動きには無関心になりがちです。

その結果 担当者に任せっきりになってしまうと 部分最適が積み重なり 工程間のズレが増え 停滞や在庫が発生するため 工場全体が最適にならないという構造的な問題が生じます。

物と情報の流れ図は 部分最適により分断された工程間を 工場全体で最も効率的な流れにするための土台となります。

工程間の関係性 物の滞留箇所 情報の指示の出し方とタイミングなどを整理することで 流れの停滞やムダの原因を明らかにすることができます。

構造的な弱点を 図によって発見することが可能になるのです。

また 図を描く過程そのものが 現場の観察と対話を促します。

工程を一つ一つ確認し 物の動きと情報の指示の出し方を記録することで 現場の実態に対する理解が深まります。

このように 物と情報の流れ図は 単なる記録ではなく カイゼンの出発点となる設計図であり 分業化された業務を 組織全員で最適にしていくためのチームワークの道具です。

1-2. 全体把握の必要性と目的

 

現場では 担当者ごとに見えている範囲が限られており 自工程の効率化に集中するあまり 他工程との関係や全体の流れが見えなくなりがちです。 
この部分最適の積み重ねが 工場全体の停滞やムダを生み出します。
流れ図を描くことで 工程間のつながりや指示の出し方 物の滞留箇所などが明らかになります。 
例えば ある工程で物が止まっている場合 その原因が前工程の過剰生産なのか 後工程の引き取り遅れなのか あるいは情報の指示が出ていないことなのかを判断できます。
このように 流れ図は流れの停滞を発見し カイゼンの優先順位を明確にするための道具です。 
また カイゼン後に再度図を描くことで 流れがどう変化したかを確認でき カイゼンの成果を構造的に評価することができます。
物と情報の流れ図は 全体最適を目指すための出発点であり トヨタ生産方式における「カイゼン」の方向性を定める基盤となります。

窓からの眺め

1-3. 物と情報の流れ図から得られる気づきと効果

 

物と情報の流れ図を描くことで 現場に対する理解が深まります。 
この図は 工程の並びだけでなく 物の動きと情報の指示の出し方を同時に可視化することで 現場の構造的な問題を発見する手助けとなります。
例えば 情報の指示が複雑であれば 指示ミスや伝達漏れが起きやすくなります。 
また 情報が出されるタイミングが工程ごとにばらついている場合 物の流れが淀み 停滞が発生します。 
こうした偏りや不整合は 担当者にしかわからないため 図を描くことで初めて問題点として浮かび上がってきます。
さらに 図を使って議論することで 現場の認識のズレが減り 組織全体の理解が揃います。 
言葉では伝わりにくい工程間の関係性や流れの停滞が 図によって一目で共有できるようになるのです。 
これにより
カイゼンのスピードと精度が向上します。
図から得られる気づきは
カイゼン活動の起点となります。 
どこにムダがあるのか どこで情報の指示が適切に出されていないのか どこが流れを阻害しているのかを明確にすることで
カイゼンの方向性が定まります。
また
カイゼンの成果を再度図に反映することで PDCAサイクルを視覚的に回すことができます。 
物と情報の流れ図は 現場の構造を問い直すための設計図であり 分業化された業務を 組織全員で最適な工場にカイゼンしていくためのチームワークの土台です。

白い柱

1-4. 組織内の認識と理解の統一

 

物と情報の流れ図は現場の作業者 管理者 技術者が同じ視点で議論するための共通言語でもあります。 
言葉では伝わりにくい工程の関係性や流れの停滞が 一目で理解できるようになります。 
現場 作業者 管理者 技術者が同じ図を見ながら話すことで 認識の統一が図れます。 
言葉だけでは伝わりにくい構造や問題点も 図を使えば一目で理解できます。
この統一感が
カイゼンの一体感を生み 現場の自律的な動きを促進します。 
図を描くことは 単なる記録ではなく 組織の思考を揃えるための設計行為でもあります。
また 流れ図を使った議論は 現場の声を引き出すきっかけになります。 
図を見ながら「この工程はなぜ止まっているのか」 「この情報は誰が いつ出しているのか」といった問いが生まれます。

こうした問いは 現場の知恵を引き出し カイゼンのアイデアを生み出す源になります。
さらに 図を共有することで 部門間の壁を越えた連携が可能になります。 
製造部門と物流部門 計画部門と現場など 異なる立場の人間が同じ図を見ながら議論することで 全体最適の視点が育まれます。
このように 物と情報の流れ図は 組織内の認識と理解を統一し
カイゼンの土台を築くための共通言語です。
図を描くことは 組織の構造を問い直し 未来の
カイゼンを設計する行為です。

異なる言語での黒板





第2章
生産リードタイムの理解と流れ図との関係

この章では リードタイムが工場の健康状態を示す最重要指標であることを理解し  どこにムダが潜んでいるかを見抜く視点を身につけます。

2-1. リードタイムの定義と構成要素

 

広義の生産リードタイムとは 製品が受注されてから出荷されるまでに要する時間のことです。 

そして

狭義の生産リードタイムとは 製品にな原材料が納品されてから製品が完成するまでに要する時間のことです。

狭義の生産リードタイムの構成要素は 大きく分けて以下の三つです。 
1. 加工時間
設備や人が実際に製品を加工している時間です。
2. 停滞時間 
工程間で物が止まって滞留している時間や 作業者が指示を待っている時間などです。
3. 運搬時間 
物が工程間を移動するために使われる時間です。 

この三つの時間を合計したものが 狭義の生産リードタイムとなります。

生産リードタイムは 工場の流れの健全性を示す重要な指標です。 

短ければ短いほど 流れがスムーズであり 工場の体質が良いと判断できます。 

なぜなら 使ったお金がより短時間で利益を生むことになるからです。
逆に 生産リードタイムが
長い場合は 流れのどこかに停滞やムダがあることを意味します。

荷物の配達

2-2. 停滞時間による工場体質の診断

 

停滞とは 物が工程間で止まっている状態を指します。 

 

私が過去に調査した生産現場では100% 実際に手を動かしている時間よりも 物が止まっている時間のほうが圧倒的に長かった というのが現実です。(概ね総リードタイムの80%~95%)。

(このことは大半の方がご存じない事実です。)


停滞が発生する原因はさまざまです。

主な原因は以下の通りです。


1. 前後工程の加工スピードの差

前の工程の加工スピードが早く 後ろの工程が遅ければ 間に前工程の完成品が溜まっていきます。

逆に

前の工程の加工スピードが遅く 後ろの工程が早ければ 間に前工程の完成品在庫を貯めていないと後ろの工程が部品切れで生産できなくなってしまいます。

2. 段取り時間待ち

前の工程が段取替えを行っている時間は後ろの工程が生産ができませんので 間に前工程の完成品在庫を貯めていないと後ろの工程が部品切れで生産できなくなってしまいます。

3. 運搬時間

後ろの工程が前の工程の完成品を要求してから到着するまでの時間は  間に前工程の完成品在庫を貯めていないと後ろの工程が部品切れで生産できなくなってしまいます。

4. 運搬ロット

前の工程の完成品を後ろの工程に搬送する数量分 到着した瞬間から停滞することになります。

5. 可動低下や不良品生産

前の工程に可動低下や不良品が発生すると 間に前工程の完成品在庫を貯めていないと後ろの工程が部品切れで生産できなくなってしまいます。

逆に

後ろの工程に可動低下や不良品が発生すると 間に前工程の完成品が溜まっていきます。

Etc.、、、

(もちろんこれ以外にも原因は沢山ありますが)この事例が示すように前後工程の関係により様々な在庫が 膨らんでいきます。

各工程が個別に最適を追い求めてしまうと 在庫増加につながってしまうのです。

2-3. リードタイムが短い会社は儲かる会社

 

使ったお金がより短時間で利益を生むということだけではなく リードタイムは 短ければ短いほど会社の損益を向上させることになります。 
なぜなら リードタイムが長いことは 会社のコストを押し上げてしまうからです。


リードタイムが長いと 在庫が増えます。
在庫が増えると 物流作業が増えます。

すると
物流什器を余計に購入する必要があります。 
保管スペースが必要になります。 
物流作業者の稼働エリアが広がり 余計な移動が増えます。
保管スペースが増えると 倉庫費用がかかります。

在庫管理の手間が増えます。
また リードタイムが長いと 受注の変動があった場合に 原材料や中間在庫の数量の適正化に時間がかかり 生産打ち切りの際に廃却品の金額が大きくなる可能性が高くなります。


このように リードタイムが長いことによって 会社の経営にとって良いことは一つもありません。
したがって リードタイムが長いことは 製造業にとっては 死活問題なのです。 

自動車販売店

2-4. リードタイムに潜むムダの種類

 

リードタイムが長くなる背景には さまざまな理由が潜んでいます。 
理由のないものも まれに存在しますが その場合はすぐに短くカイゼンすることが基本です。
リードタイムに物と情報の流れ図を重ねて描くことで リードタイムが長くなる理由を明確に表現することが大切です。 
構造的に見える化することで 現場の停滞やムダの本質に気づくことができます。

代表的なリードタイムが長くなる理由には 以下のようなものがあります。


一つ目は「前後工程の稼働時間差」です。 
これは 前工程と後工程で稼働時間や稼働日数が異なる場合に発生します。 
例えば 後工程が平日だけ稼働しているのに 前工程は生産能力が足りないため土日も稼働している場合 前工程で土日に数を挽回して生産された物が 月曜日には2日分滞留します。
流れ図に稼働日や稼働時間を記載することで この差を視覚的に把握することができます。

二つ目は「工程を進める情報(指示)の欠如」です。 
これは 指示が出されていないために 担当者が安全のために早めに工程を進めてしまうという場合に発生します。 
例えば 後工程から正しいタイミングで運搬指示が出ていない場合 物流作業者は どうしても早め早めに前工程から後工程へ物を運んでしまう ということになります。 
このような場合 前工程は完成品在庫が早くなくなってしまうので 後工程が必要とするタイミングでないにもかかわらず 次のロットの生産に取り掛かってしまいます。 
さらにはその前工程や原材料調達にも その不要な生産の情報が伝播していってしまうのです。
流れ図に情報の生産指示情報/運搬指示情報の発信点と受信点を記載することで 指示の欠如を明確にすることができます。

三つ目は「荷姿変換」です。 
これは 工程間で物の形状や単位が変わるために 変換作業が必要となり リードタイムが延びるケースです。 例えば 前工程ではバラ部品で納品され 後工程ではそれを箱詰めしてから使用する場合 箱詰め作業が発生し その分だけ時間がかかります。
工程間で動いていく「数」だけが違う場合にも 荷姿変換は発生します。
購入時のトレイの入数と 装置にかける際に整列するトレイの入数が異なっていれば 荷姿変換が発生してしまいます。
また 荷姿が変わることで保管場所や運搬方法も変わり 余分な手間が発生します。 
流れ図に荷姿の変化点を記載することで 変換にかかる時間と手間を見える化できます。

四つ目は「分岐/合流」です。 
これは 一つの工程から複数の工程に分岐したり 複数の工程から一つに合流したりする構造によって 流れが複雑化し リードタイムが延びるケースです。 
例えば 部品Aと部品Bが別々の設備で加工され 最終工程で組み立てられる場合 どちらかが遅れると 全体の流れが止まります。 
また 分岐した工程のうち 一つでもトラブルがあると 合流工程が待機状態になります。 
流れ図に分岐点と合流点を明示することで 流れの複雑さと停滞リスクを把握することができます。

これらのムダは 単独で発生することもありますが 多くの場合 複数のムダが絡み合って リードタイムを長くしています。 
そのため 流れ図を使って構造的に分析することが不可欠です。

ロープで訓練する男

2-5. リードタイムとの連動による物と情報の流れ図の意義

 

物と情報の流れ図は リードタイムとセットで描くことで 初めてカイゼンの道具として機能します。 
工程の並びだけを描いても 流れの停滞やムダの原因は見えてきません。 
そこに時間の情報を加えることで 構造と実態のギャップが明らかになります。
リードタイムを工程ごとに記載することで どの工程で物が止まっているのか どこで情報の指示が遅れているのかが見えてきます。 
また リードタイムの長い工程には その原因を記載することが重要です。 
原因が分からない場合は あえて記載しないことで 現場に問いを投げかけることができます。
このように リードタイムと連動した流れ図は 現場の構造を問い直すための設計言語です。 
カイゼンの方向性を定めるための土台であり 組織全体で流れを見直すための共通の視点となります。
トヨタ生産方式においては 「カイゼン」は現場の構造を問い直すことから始まります。 
物と情報の流れ図にリードタイムを重ねることで その問いが形になり カイゼン具体的に進んでいくのです。

ラブバード
★無料パートEnd

​生産管理研究所

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