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教育テキスト

エクセルを用いた需要予測

ここでは「エクセルを用いた需要予測」の基礎について詳しく学びます​。

内容は下記の項目についてです。

このページで無料で学ぶことができます。

第1章 見込み生産における需要予測の重要性

 1-1. 受注生産と見込み生産の違い

 1-2. リードタイムと在庫の関係

 1-3. 見込み生産における需要予測の重要性

第2章 需要予測の考え方と落とし穴

 2-1. 営業・事業部門による需要予測の限界

 2-2. 未来予測の本質

  1. 第3章Excelを用いた販売数量予測の実践

  2. ​​ 3-1販売数量予測にExcelを利用するメリット

  3.  3-2. 過去データの整備と累積値の活用

  4.  3-3. 線形近似による予測の基本

  5.  3-4. Excel関数による予測値の算出

  6.  3-5. 環境変化を加味した予測の調整

  7. 第4章予測精度の検証と改善

  8.  4-1. 実績との比較による予測精度の評価

  9.  4-2. 誤差の傾向分析と原因特定

  10.  4-3. 傾き・切片・季節係数の見直し

  11.  4-4. 市場変化を取り込む継続改善

★無料パート

第1章
見込み生産における需要予測の重要性

Excelで需要予測を行うには まず「なぜ予測が必要なのか」を理解することが欠かせません。 

本章では 見込み生産では需要予測が重要であるということについて  
①生産方式の違い → ②リードタイムと在庫の制約 → ③予測精度が経営に直結する構造
の順に整理して説明していきます。

1-1. 受注生産と見込み生産の違い

 

受注生産とは
受注生産とは 顧客から注文を受けてから製品を製造する方式です。 
この方式では 在庫を持たずに済むため 無駄な在庫コストを削減できます。
例えば 特注家具の製造では 顧客がサイズや素材を指定した後に製造が始まります。 
この場合 製造開始から納品までに平均して15日かかります。 
その間 顧客は納品を待つ必要がありますが 製品は顧客の要望に完全に応じたものになります。
受注生産は 製品の仕様が多様で 顧客ごとに異なる場合に適しています。 
ただし 製造リードタイムが長い場合 顧客満足度を損なう可能性があります。


見込み生産とは
見込み生産とは 顧客からの注文を待たずに 事前に需要を予測して製品を製造する方式です。 
この方式では 製品を在庫として保管し 顧客からの注文に即座に対応できます。
例えば 家庭用洗剤の製造では 月間販売数量を予測して 事前に製造を行います。 
あるメーカーでは 月間平均販売数量が12万本であるため 毎月13万本を製造しています。 
この余剰分は在庫として保管され 欠品を防ぐ役割を果たします。
見込み生産は 製品の仕様が標準化されており 顧客の注文が一定の範囲で予測可能な場合に適しています。 
ただし 予測が外れた場合には 過剰在庫や欠品のリスクが発生します。


両者の比較と選択基準
受注生産と見込み生産の違いは 製造開始のタイミングと在庫の有無にあります。 
受注生産では在庫を持たず 顧客の注文に応じて製造します。 
見込み生産では需要を予測して事前に製造し 在庫を持ちます。
例えば ある電子部品メーカーでは 顧客の納期要求が平均で5日以内であるため 受注生産では対応できません。 そのため 見込み生産に切り替え 月間平均販売数量である8万個を事前に製造しています。
製品の特性 顧客の納期要求 製造リードタイムなどを総合的に判断して 生産方式を選択する必要があります。

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1-2. リードタイムと在庫の関係


出荷リードタイムとは
出荷リードタイムとは 顧客が注文してから製品が出荷されるまでの時間です。 
この時間が短いほど 顧客満足度は高くなります。
例えば 通販サイトでは 顧客が注文してから2日以内に商品が届くことが求められます。 
このため 出荷リードタイムは最大でも48時間以内に設定されています。
出荷リードタイムが長い場合 顧客は他社製品に流れる可能性が高くなります。


生産リードタイムとは
生産リードタイムとは 製品の製造開始から完成までにかかる時間です。 
この時間は 製造工程の数や設備の能力によって異なります。
例えば 自動車部品の製造では 材料投入から完成までに平均して7日かかります。 
このため 顧客からの注文に即座に対応することは困難です。
生産リードタイムが長い場合 見込み生産によって在庫を持つ必要があります。


在庫の役割と限界
在庫は 顧客の注文に即座に対応するための緩衝材として機能します。 
ただし 在庫を持つことには保管コストや陳腐化リスクが伴います。
例えば 家電製品では 月間販売数量が2万台であるにもかかわらず 3万台の在庫を持っていた場合。 
1万台分の保管コストが月間で約300万円かかると試算されています。
また 製品のモデルチェンジが頻繁な場合 在庫が売れ残る可能性があります。


リードタイムと在庫の関係性
出荷リードタイムが短く 生産リードタイムが長い場合には 在庫を持つ必要があります。 
このため 見込み生産が選択されることが多くなります。
例えば 医療機器メーカーでは 顧客からの注文に対して48時間以内に出荷する必要があります。 
しかし 製造には平均で10日かかるため 月間平均販売数量である500台を事前に製造し 在庫として保管しています。
このように リードタイムの差が在庫の必要性を決定づけます。

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1-3. 見込み生産における需要予測の重要性

 

需要予測が経営に与える影響
見込み生産では 需要予測の精度が経営の安定性に直結します。 
予測が外れた場合には 過剰在庫や欠品が発生し コストや機会損失につながります。
例えば 食品メーカーが 月間販売予測を15万個として製造したところ 実際の販売数量は12万個でした。 
この結果 3万個の在庫が余り 廃棄コストとして月間で約120万円の損失が発生しました。
逆に 予測を12万個としたところ 実際の販売数量は14万個であり 2万個の欠品が発生しました。 
この結果 顧客からの信頼を失い 次月の注文が20%減少しました。
このように 予測精度は単なる数字の誤差ではなく 顧客満足度と収益性に直接影響します。

なぜ見込み生産では予測が不可欠なのか
見込み生産では 製品を事前に製造して在庫として保管するため 販売数量を正確に予測できなければ 過剰在庫や欠品が発生します。
例えば 医療機器メーカーが 月間平均販売数量を500台と見込んで製造したところ 実際の販売数量が600台に達した場合 100台の欠品が発生します。 
この欠品によって 医療現場での納期遅延が発生し 顧客からの信頼を損なう可能性があります。
逆に 予測を700台とした場合 実際の販売が500台であれば 200台の在庫が余ります。 
この余剰在庫の保管コストが月間で約80万円かかると試算されています。
見込み生産では 「作りすぎても損」 「足りなくても損」 という構造があるため 予測の精度が経営の損益分岐点に直結します。

予測が経営判断の土台になる理由
需要予測は 単なる生産計画のための数字ではありません。 
それは 資材調達 設備稼働 人員配置 販売戦略など あらゆる経営判断のベースとなります。
例えば ある化粧品メーカーが 次月の販売数量を10万個と予測した場合 容器の発注数 原料の仕入れ量 製造ラインの稼働時間がすべてこの予測に基づいて決定されます。
もし実際の販売数量が8万個であれば 原料が余り 廃棄コストが発生します。 
逆に 12万個であれば 容器が不足し 製造が止まる可能性があります。
このように 需要予測は単なる数字ではなく 経営資源の配分を左右する「設計図」のような役割を果たします。

Excel は、この需要予測を“現場で再現可能な形”で扱うための最も実用的なツールです。
次章では、Excelを使って予測を行うための具体的な方法を学びます。

生地を混練

 

 

 

 

第2章
需要予測の考え方と落とし穴

2-1. 営業・事業部門による需要予測の限界

営業・事業部門の予測が外れやすい理由は  

①主観 ②目標の混同 ③曖昧情報 ④組織的バイアス の4つに分類できます。
以下では それぞれの典型例を紹介します。
 

①主観

営業部門が提出する販売予測には 主観的な「期待値」や「こうあるべき」という意思が含まれることがあります。

このような予測は 現場の実態とずれることがあり 結果として経営判断に影響を及ぼす可能性があります。

例えば ある事業部が「今月は新製品の広告効果で20%増加するはず」として 予測を12万個と提出したとします。

しかし 実際の販売数量が9万8000個であった場合 予測との差は2万2000個となります。

この差によって 在庫が過剰となり 保管コストが月間で約88万円発生するなど 経済的な負担が生じることがあります。

営業予測は「販売の期待値」であって「供給の根拠」にはなりません。 
そのため 生産部門は営業予測をそのまま採用するのではなく 過去実績や市場データに基づく“供給側の予測値”を持つ必要があります。

②目標の混同

営業部門では 販売目標やノルマが設定されていることが多く その数値が予測として扱われるケースがあります。 例えば 営業部が「今月は15万個売るべき」として 予測を15万個と報告した場合 実際の販売実績が12万個であれば 3万個の在庫が余ることになります。

この余剰在庫によって 倉庫スペースが逼迫し 他製品の保管に支障が出る可能性があります。

ノルマは達成すべき目標であり 予測とは異なる概念です。

予測は 客観的な根拠に基づいて行う必要があります。

③曖昧情報

営業担当者は 顧客との会話から販売見込みを把握しようとします。

しかし 顧客の発言には 曖昧さや希望的観測が含まれることがあります。

例えば 顧客が「来月は多めに発注する予定」と述べた場合 営業担当者がそれを「20%増加」と解釈して予測に反映したとします。

しかし 実際の発注が5%増加にとどまった場合 予測との差が15%となります。

このような誤差は 生産計画に影響を与え 在庫過剰や欠品の原因となる可能性があります。

顧客ヒアリングは参考情報として扱い 数値化には慎重さが求められます。

④組織的バイアス

企業内では 部門間の調整や予算獲得のために 数値が意図的に操作されることがあります。

このような背景があると 予測は現実を正しく反映しなくなります。

例えば ある事業部が「来期は前年比30%増加する」と予測を提出したとします。

その背景には 設備投資予算を確保するための意図が含まれていた可能性があります。

しかし 実際の販売増加率が8%にとどまった場合 投資回収が困難となり 経営資源の配分に影響を及ぼすことになります。

正しい需要予測値を生産計画の根拠とする

予測は 経営資源の配分に直結するため 社内調整や主観的な意図に左右されない 客観的な仕組みが必要です。 期待値に基づいた予測は 意欲的な目標設定には役立ちますが 生産計画の根拠として用いると 在庫過剰や欠品などのリスクを引き起こす可能性があります。

そのため 生産部門は 営業部門が提出する販売予測を鵜呑みにすることなく 過去の実績や市場動向などをもとに 正しい需要予測値を把握しておく必要があります。

この姿勢が 過剰在庫や欠品のリスクを減らし 安定した供給体制を支える基盤となります。

統計量の算出

2-2. 未来予測の本質

 

2-1 では 主観や組織的バイアスによって予測が歪む問題を見てきました。 
しかし 予測が難しい理由はそれだけではありません。 
そもそも未来は本質的に不確実であり 完全には予測できない という前提があります。 
ここでは その「未来予測の本質」について整理します。

未来予測を理解するのには 
①不確実性の理解

②基本原則(過去の延長)

③例外処理(環境変化の補正)

④データの安定化(累積値) 
という4つの項目をステップに沿って学ぶ必要があります。
以下では この順に沿って整理します。

 

①不確実性の理解
需要予測は未来を対象とするため 不確実性を常に伴います。 
どれほど精緻なモデルを用いても 未来を完全に予測することはできません。
例えば 2020年初頭にある医療機器メーカーが 月間販売数量を2万台と予測していました。 
しかし 新型感染症の流行により 需要が急増し 実際の販売数量は5万台となりました。 
このような外的要因は予測モデルでは捉えきれません。
予測とは「確率的な見通し」であり 「確定的な未来」ではありません。

②基本原則(過去の延長)
未来を予測する最も確実な方法は 過去の事実を延長することです。 
過去の販売実績には 実際の顧客行動が反映されており 主観が入りにくい特徴があります。
例えば 過去12か月間の販売数量が以下のように推移していた場合。 
平均販売数量:10万個 標準偏差:1万個
この場合 次月の予測値は10万個 ± 1万個の範囲で設定するのが合理的です。 
このような予測は 過去の傾向に基づいており 外れ値のリスクを抑えることができます。
過去の延長は「退屈な方法」に見えるかもしれませんが 最も信頼性の高い予測手法です。

③例外処理(環境変化の補正)
過去の延長だけでは対応できない場合もあります。 
新規顧客の獲得 製品の廃止 法改正などの環境変化がある場合には 補正が必要です。
例えば ある食品メーカーが 10万個の販売実績をもとに予測を立てていたところ 新たに大手スーパーとの取引が開始され 月間で2万個の追加注文が見込まれるようになりました。 
この場合 予測値は10万個 + 2万個 = 12万個に修正する必要があります。
また ある製品が法改正により販売禁止となった場合 過去の販売実績が8万個であっても 予測値は0個にする必要があります。
環境変化は予測の前提を変えるため 定期的な見直しと補正が不可欠です。

④データの安定化(累積値)
月別の販売数量にはばらつきがあるため そのままの数値を使うと予測が不安定になります。 
このような場合には 累積値を用いることで傾向を把握しやすくなります。
例えば 以下のような販売実績があるとします。 
1月:9万個 2月:11万個 3月:8万個 4月:12万個 5月:10万個 6月:13万個
このばらつきは ±2万個の範囲に収まっていますが 累積値にすると以下のようになります。 
1月累積:9万個 2月累積:20万個 3月累積:28万個 4月累積:40万個 5月累積:50万個

6月累積:63万個
この累積値をグラフ化すると 緩やかな上昇傾向が見られます。 
この傾向に対して線形近似を行うことで より安定した予測が可能になります。
累積値は「ばらつきを吸収するフィルター」として機能します。

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★無料パートEnd

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