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教育テキスト

かんばん方式の基礎と運用時の注意点

ここではトヨタ生産方式で有名なかんばん方式の基礎について詳しく学びます​。

内容は下記の項目についてです。

概要についてはこのページで無料で学ぶことができます。

かんばんの高度な運用方法については有料パートとなりますのでボタンを押してお申込みください。

第1章:かんばんとは何か

 1.1 かんばんは生産現場への指示書

 1.2 かんばんの指示内容

 1.3 かんばんは“工程を動かすトリガー”

 1.4 生産指示かんばんと運搬指示かんばん

第2章:かんばんの目的​

 2.1 生産計画を不要にする

 2.2 生産進度の微調整を容易にする

 2.3 在庫を増やさずに工程をつなぐ

 2.4 なぜ計画より柔軟なのか

第3章:かんばん運用の大前提

 3.1 工程の安定性

 3.2 納品頻度と搬送リードタイムの管理

 3.3 工場の実力

 3.4 かんばんは“しくみの鏡”

第4章:仕掛けのしくみ

 4.1 指示を出すこと=「仕掛け」

 4.2 パターン仕掛け(定期仕掛け)

 4.3 ロット形成(定量仕掛け)

 4.4 仕掛けの違いと在庫に与える影響

 4.5 なぜこの2種類が必要か

第5章:多品種生産への対応
 5.1 パレート図とは
 5.2 主力品はパターン 非主力品はロット形成
 5.3 定・定仕掛けと指定席・自由席の考え方
 5.4 実例
 5.5 まとめ
第6章:かんばんの具体的運用
 6.1 運搬指示かんばんの例
 6.2 生産指示かんばんの例
 6.3 仕掛けタイミングとかんばん枚数の関係
 6.4 かんばんの運用ルール
第7章:かんばん方式の限界と補完
 7.1 工場の実力が不安定な場合の補完策
 7.2 かんばん方式と生産計画指示の併用事例
 7.3 自動化/デジタルかんばんの活用と注意点
 7.4 かんばんは改善の道具
第8章:まとめ
 8.1 流れを守る信号としてのかんばん
 8.2 枚数とタイミングの設計原理
 8.3 品種ごとの仕掛け方式の使い分け
 8.4 限界への対応と補完の工夫

★無料パート

第1章
かんばんとは何か
“紙1枚で工程を動かす”しくみ

1.1 かんばんはトヨタ生産方式の代表的なツール
 

かんばんはトヨタ生産方式(TPS)の中核をなす管理手法のひとつであり「必要なものを必要なときに必要な量だけ」生産するためのしくみです。
TPSが目指すのはムダのない流れと工程の自律性。
その実現手段としてかんばんは現場における情報伝達と工程制御の役割を担っています。
トヨタではかんばんがなければ工程は動かないという原則が徹底されておりそれによって過剰生産や在庫のムダを防いでいます。
つまりかんばんはTPSの思想を現場で具体的に運用するための“道具”であり“しくみ”そのものなのです。
かんばん方式は単なる伝票管理ではなく工程の流れそのものを設計・制御する構造的な仕掛けです。
現場の作業者が「何をすべきか」を迷わず判断できるようにすることで工程の自律性を高め管理者が逐一指示を出さなくても現場が動く状態をつくります。
これは単なる効率化ではなく組織の知的負荷を分散し現場力を引き出すための設計思想でもあります。

カーフレーム

1.2 かんばんは生産現場への指示書──“工程を動かすトリガー”

 

かんばんとは工程に対して「何を」「どれだけ」「いつ」「どこへ」作る・運ぶかを伝える指示書です。
紙1枚に見えるかもしれませんが現場ではこの1枚が工程を動かす“起点”となります。
かんばんが出されることで作業者は迷うことなく次の作業に着手でき工程間の流れが自然に生まれます。
かんばんは単なる情報伝達ではなく工程の動作を制御する“しくみのスイッチ”なのです。
かんばんの運用によって工程は「必要なときに必要な分だけ」動くようになります。
これは従来の“計画主導型”の生産とは異なり“現場主導型”の流れをつくることを意味します。
かんばんが出されることで工程が動き出されなければ動かない──この明快なルールが工程のムダを防ぎ流れの滑らかさを保つ鍵となります。

重要なのはかんばんが単なる伝票ではなく“工程を動かすトリガー”であるという点です。
かんばんが出されることで工程は「必要だから動く」という状態になります。
逆にかんばんがなければ動かない──このしくみが過剰生産やムダな在庫を防ぐ鍵となります。
かんばんは“必要性の証明”であり工程の流れを守るための信号です。
この「かんばんが出るまで動かない」という原則がジャストインタイム生産の根幹を支えています。
工程は常に“必要な分だけ必要なタイミングで”動くようになり余剰在庫や手待ち時間が自然に減っていきます。
つまりかんばんは工程の自律性と在庫の最適化を同時に実現するしくみなのです。
またかんばんは「計画の代替手段」としても機能し

射撃

1.3 指示内容には「品番」「数量」「納期」「仕掛け元・仕掛け先」などが記載される

 

かんばんには品番・数量・納期・仕掛け元・仕掛け先などの情報が明記されており工程間のやり取りを標準化する役割を果たします。
これにより口頭指示や個別判断に頼らず誰が見ても同じ行動が取れるようになります。
かんばんは「現場の共通言語」であり工程の自律性を支えるしくみです。
とくに多品種・多工程の現場ではかんばんの標準化が混乱を防ぎ流れの安定化に直結します。
情報が明確であればあるほど工程間の誤解や手戻りが減り作業者の判断負荷も軽減されます。
これは品質・納期・安全の面でも大きな効果をもたらします。

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1.4 生産指示かんばんと運搬指示かんばんの違いと役割

 

かんばんには大きく分けて2種類あります。
ひとつは「生産指示かんばん」でこれは部品や製品を“つくる”ための指示です。
もうひとつは「運搬指示かんばん」でこれは完成品や部材を“運ぶ”ための指示です。
生産指示かんばんはたとえば組立工程に「この部品を何個作ってほしい」という指示を出すもので工程内の作業を動かします。
一方運搬指示かんばんは「この部品を次工程に何個届けてほしい」という指示であり工程間の物流を動かします。
両者は見た目こそ似ていますが役割は明確に異なります。
この違いを理解することはかんばん方式の運用設計において非常に重要です。
生産指示かんばんは“つくる工程”のタイミングを制御し運搬指示かんばんは“流す工程”のタイミングを制御します。
つまりかんばんは「つくる」と「流す」を分けて管理することで工程の混乱を防ぎ流れの滑らかさを保つ役割を果たします。
かんばんが正しく機能することで工程間のつながりが強化され全体としての流れが滑らかになります。
これは在庫の削減だけでなく納期遵守率の向上品質安定作業者の負荷軽減など複数の改善効果をもたらします。

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1.5 かんばんの基本的な回し方

 

かんばんは工程間を循環することで生産の流れを制御します。

その基本は「前工程」と「後工程」の間で情報を正しく回すことにあります。 
後工程が前工程の完成品を部品として使用した時 前工程に対して生産指示かんばんを回します。 
これは「この部品を何個作ってほしい」という具体的な生産要求を伝えるもので 前工程の作業を動かす信号となります。 
前工程ではこのかんばんを受け取った時点で生産を開始し 完成した部品にかんばんを添えて出荷します。
次に 前工程とその部品を保管する倉庫(部品置き場)の間では運搬指示かんばんが回されます。 
これは「この部品をどこへ どれだけ運ぶか」を示す指示であり 物流の動きを制御します。

運搬指示かんばんが出されることで 必要な部品が必要なタイミングで次工程へ届けられます。 
このしくみによって工程間の流れが途切れず 在庫が過剰にならないように保たれます。
つまり かんばんの基本的な回し方とは「生産を動かすかんばん」と「運搬を動かすかんばん」をそれぞれ正しい位置で循環させることです。 
後工程が必要を示し 前工程がそれに応じて生産し 倉庫が運搬を担う──この一連のサイクルが流れを生み出します。 
かんばんが正しく回ることで 工程は自然に連動し 誰もが同じリズムで作業を進められるようになります。 
これがトヨタ生産方式における「かんばんの基本動作」であり 流れを守るための最も重要な原則です。

かんばんの基本.png





第2章
かんばんの目的

“生産計画をなくす”という革命

かんばん方式の本質は生産現場に提示する「生産計画をなくす」ことにあります。 
これは単に計画を放棄するという意味ではありません。 
従来の中央集権的な生産計画から 現場主導の“流れに基づく制御”へと発想を転換することを意味します。 
かんばんは工程の必要性に応じて生産や搬送を促す「必要の証明」です。 
工程の自律性を支えるしくみであり 改善の道具です。
かんばんそれ自体が目的ではなく 流れを守るための手段です。 
この章では かんばんがなぜ計画に代わるしくみとなり得るのか その目的と構造的な意味を解説します。

2.1 生産計画を不要にする:現場が必要なタイミングで必要な量だけ動く

 

従来の生産管理では上位部門が詳細な生産計画を立てそれを現場に指示することで工程を動かしていました。

これは一見合理的に見えますが実際には多くの問題を抱えています。

計画は常に予測に基づいており現場の実態とはズレが生じやすく過剰生産や欠品手待ち在庫の滞留などを引き起こします。
かんばん方式ではこの“計画による制御”をやめ現場が必要になったタイミングで必要な量だけを仕掛けるしくみに切り替えます。
つまり工程が「欲しい」と言ったときにだけ前工程が動く。
これにより工程間の流れが自然に整いムダな在庫や作業が発生しにくくなります。
このしくみはジャストインタイム(JIT)の思想と深く結びついています。
JITでは「必要なものを必要なときに必要な量だけ」供給することが原則でありかんばんはその実現手段です。

かんばんが出されることで前工程は「必要性が証明された」と判断し無理なく生産を開始します。
これにより中央で立てた計画に頼らずとも現場の実態に即した生産が可能になるのです。

が 後補充生産では「補充ルール」があれば 細かい計画は不要になることもあります。

メガホンの肖像画

2.2 生産進度の微調整を容易にする:かんばんの枚数で進度を調整

 

かんばんのもうひとつの重要な役割は生産進度の微調整を容易にすることです。
従来の生産計画では進度の調整は生産管理担当者が手動で行う必要があり現場の変化に即応するには限界がありました。
かんばん方式ではかんばんの枚数そのものが進度の調整手段となります。
たとえばある工程でかんばんが3枚出ていればそれは「3回分の作業をしてほしい」という指示になります。
逆にかんばんが1枚しか出ていなければ1回分だけ作業すればよい。
このようにかんばんの枚数がそのまま生産量の調整手段となるため現場の状況に応じて柔軟に対応できます。


さらにかんばんの枚数は工程の負荷や在庫状況を反映するため進度の調整が“見える化”されます。
管理者はかんばんの枚数を見ればどの工程が滞っているかどこが過剰になっているかを即座に把握できます。
これにより現場の判断力が高まり工程間の連携がスムーズになります。
かんばんの枚数による制御は単なる数量管理ではなく工程のリズムを整えるための“テンポ調整装置”とも言えます。かんばんのもうひとつの重要な役割は生産進度の微調整を容易にすることです。
従来の生産計画では進度の調整は生産管理担当者が手動で行う必要があり現場の変化に即応するには限界がありました。
かんばん方式ではかんばんの枚数そのものが進度の調整手段となります。
たとえばある工程でかんばんが3枚出ていればそれは「3回分の作業をしてほしい」という指示になります。
逆にかんばんが1枚しか出ていなければ1回分だけ作業すればよい。
このようにかんばんの枚数がそのまま生産量の調整手段となるため現場の状況に応じて柔軟に対応できます。
さらにかんばんの枚数は工程の負荷や在庫状況を反映するため進度の調整が“見える化”されます。
管理者はかんばんの枚数を見ればどの工程が滞っているかどこが過剰になっているかを即座に把握できます。
これにより現場の判断力が高まり工程間の連携がスムーズになります。
かんばんの枚数による制御は単なる数量管理ではなく工程のリズムを整えるための“テンポ調整装置”とも言えます。

工程が自律的に動きながら全体としての流れを守る──これがかんばん方式の強みです。

ブランド素材

2.3 在庫を増やさず工程をつなぐ:かんばんが“必要の証明”になる

 

工程間をつなぐ際従来は「とりあえず作っておく」「余裕を持って運んでおく」という発想が主流でした。
これは一時的には安心感を与えますが結果として在庫が膨らみ保管スペース・資金・品質リスクなどの問題を引き起こします。
かんばん方式では工程間のつながりを“必要の証明”によって制御します。
つまり後工程がかんばんを出すことで「今これが必要です」と前工程に伝え前工程はその証明がある場合のみ動きます。
これにより工程間のつながりは“実需”に基づいて成立しムダな在庫を持たずに済むようになります。
このしくみは在庫を“持つ”のではなく“流す”という発想の転換を促します。
かんばんが出ることでモノは必要なタイミングで必要な場所へと流れ滞留せずに工程を通過していきます。
これは在庫を減らすだけでなく工程のスピードと品質を高める効果もあります。
またかんばんが“必要の証明”であるという考え方は現場の納得感にもつながります。
作業者は「なぜこの作業をするのか」が明確になり無意味な作業や過剰な準備が減ります。
これは現場のモチベーションや責任感にも好影響を与えます。

結婚証明書

2.4 なぜかんばんが計画より柔軟なのか

 

かんばん方式が計画より柔軟である理由は 構造的に“現場の変化に即応できる”しくみだからです。 
計画はあくまで予測に基づいて立てられるため 変化に弱く 修正に時間がかかります。
かんばんは 現場の実需に応じてリアルタイムで発行されるため 変化に強く 即応性があります。
たとえば 急な注文が入った場合 従来の計画では対応が困難です。 
かんばん方式では 後工程が必要な分だけかんばんを出すことで 前工程がすぐに動き出せます。 
逆に 需要が減った場合も かんばんが出なければ前工程は動かないため 過剰生産を防ぐことができます。

 

さらに かんばんは 工程ごとの処理能力や納品頻度に合わせて設計できます。 
現場の実力に応じた運用が可能です。 
これは 計画のように一律の指示を押し付けるのではなく 現場の状況に合わせて“しくみを調整できる”という柔軟性を意味します。
かんばんの柔軟性は 単なる運用の工夫ではありません。 
構造的な強みです。 工程が自律的に判断し 必要なときに 必要な分だけ動く──このしくみが 変化の多い現場において 安定した流れを生み出すのです。 
そして その流れこそが 改善の起点となり 工場全体の実力を引き上げるのです。 

 

かんばんは目的ではなく 改善の道具です。

その道具を活かすかどうかは 現場の理解としくみの設計にかかっています。

ロッククライマー





第3章
かんばん運用の大前提

“工場の実力と平準化”がすべて

かんばん方式は 単なる道具ではありません。 

それは“しくみ”であり 改善のための制御手段です。 

そして そのしくみが機能するためには 工場の実力と平準化が大前提となります。

かんばんを導入すれば 自動的に在庫が減る 工程が滑らかになる──そう考えるのは危険です。 かんばんは「流れを守るための信号」であり 工程が安定していて初めて その信号が意味を持ちます。さらに かんばんが機能するためには 生産のばらつきを抑える「平準化」が不可欠です。 

この章では 工場の実力と平準化の意味 そして それがなぜ不可欠なのかを構造的に解説します。産計画では

 

3.1 平準化の重要性──“流れを守るための土台”

 

平準化とは 生産量 品種 タイミングを安定させることです。 
工程の負荷を均等にし 流れを滑らかにするためのしくみです。 
かんばん方式は「必要なときに 必要な量だけ」動かすしくみですが その“必要な量”が極端に変動するようでは 流れは乱れます。
平準化ができていない状態では かんばんが出されても工程が対応できず 結果として現場は混乱します。 
混乱を避けるために 現場は反って在庫を増やさなければならなくなります。
たとえば ある工場では 月初に注文が集中し 月末は閑散という状況が続いていました。 
この状態でかんばん方式を導入したところ 月初にかんばんが大量に発行され 工程が処理しきれず滞留が発生。 
納期遅延を避けるために 安全在庫を積み増すしかなく 結果的に在庫量は導入前より増加しました。

 

かんばんは“流れを守る道具”です。 
その流れを守るためには 平準化という“土台”が必要なのです。

グラフ

3.2 工程の安定性──品質 納期 処理時間のばらつきをなくす

 

かんばん方式のもうひとつの前提は 工程の安定性です。 
工程が安定していなければ かんばんの指示に従っても 納期が守れず 品質がばらつき 流れが乱れます。
工程の安定性とは 以下の3つの要素で構成されます。 
・品質の安定:不良率が低く 再加工や手戻りが発生しない 
・納期の安定:指示されたタイミングで確実に完了する 
・処理時間の安定:サイクルタイムにばらつきがない
これらが揃って初めて かんばんによる制御が成立します。

 

たとえば ある工程が「かんばん1枚につき10分で処理する」と設計されていても 実際には5分だったり20分だったりするようでは 後工程は待ち時間や過剰在庫に悩まされることになります。
 

かんばんは“流れのテンポ”を守る道具です。 
そのテンポが乱れると かんばんはむしろ混乱の原因になります。
工程の安定性は かんばん運用の土台です。 
かんばんを導入する前に まず工程のばらつきを見える化し 標準作業を確立することが不可欠です。

瞑想

3.3 前後工程のタクトタイムをできるだけ合わせる──“流れの整合性”を守る

 

かんばん方式では 工程間のつながりが “かんばんの回収と発行”によって制御されます。 
つまり かんばんが後工程から前工程へ戻ってくることで 次の生産や搬送が始まるしくみです。
かんばんのくみがスムーズに機能するためには 前後工程のタクトタイムができるだけ揃っていることが重要です。


タクトタイムとは 顧客の要求に対して どれくらいの時間で1個の製品を作ればよいかを示す基準時間です。 
たとえば 1日480分の稼働時間で 120個の製品を作る必要がある場合 タクトタイムは4分となります。 
つまり 4分に1個のペースで製造すれば 顧客の要求に応えられるということです。
このタクトタイムが前工程と後工程で大きく異なると かんばんの流れは乱れます。 
工程間のテンポが合わず モノが滞留したり 欠品したりする原因になります。

 

たとえば 前工程が2直(1日16時間)で稼働しており 後工程が3直(1日24時間)で稼働している場合を考えてみましょう。 
後工程は常に流れ続けているにもかかわらず 前工程は夜間停止しているため かんばんが出されても対応できません。
この結果 後工程は待ち時間が発生し かんばんが空回りすることになります。

現場では「かんばんが出ているのにモノが来ない」という混乱が起こり それを避けるために 安全在庫を積み増すしかなくなります。
つまり タクトタイムが合っていないと かんばんの“必要の証明”が機能せず 流れが止まり 在庫が増えるという逆効果を生むのです。


かんばん方式では「かんばんが出されたら すぐに動く」ことが前提です。 
そのためには 前後工程の稼働時間や処理能力を揃え タクトタイムの整合性を保つ必要があります。
この整合性が保たれていないと かんばんの効果は半減し 現場の混乱と在庫の増加を招きます。
かんばんの反応速度を最大限に引き出すためには 納品頻度や搬送リードタイムだけでなく 工程のタクトタイムそのものを見直すことが不可欠です。
それこそが “流れの整合性”を守るための本質的な改善です。

オーケストラ指揮者

3.4 大前提が崩れると かんばんは機能せず 在庫が膨らむ

 

かんばん方式は 「平準化」「工程の安定性」「タクトタイムの整合性」という 3つの前提条件が揃って初めて機能する生産体制です。 
これらの前提は 単なる理論ではなく 現場の工程が持つ“実力”そのものを意味します。 
つまり かんばんの前提条件とは 工程の実力を問う基準でもあるのです。
このいずれかが崩れると かんばんは“必要の証明”としての役割を果たせなくなります。 
その結果 現場は混乱し 流れは滞り 在庫は反って増えることになります。
平準化ができていない場合 注文の波に合わせてかんばんが大量に発行されても 工程が処理しきれず モノが滞留します。

 
工程の安定性が欠けている場合も同様です。 
前工程の供給が安定した以内ようでは 後工程は待ち時間や過剰在庫に悩まされます。

 

さらに タクトタイムが前後工程で合っていない場合 かんばんを出しても 前工程は対応できません。 
このズレが原因で かんばんが空回りし 流れが乱れます。
こうした状態では かんばんは“絵に描いた餅”になってしまいます。 

かんばんが出されても 工程が動けない 搬送が遅れる 品質がばらつく── その結果 現場は在庫を多めに持たなければならなくなります。


かんばんは「生産体制の中における信号」です。 
その信号に対して 工程が確実に反応できることが前提です。 
反応できない状態でかんばんを使っても 期待した効果は得られません。
かんばんは“魔法の紙”ではありません。 
それは“工場の実力を映す鏡”です。 
その鏡に映るのは 現場の整合性と成熟度です。
納品頻度 搬送リードタイム タクトタイムの整合性 そして工程の安定性が揃っていなければ かんばんは生産体制の中で機能せず 流れを守るどころか 在庫を増やす要因となってしまいます。

 

このように かんばん方式は 前提が崩れた瞬間に 改善ツールから混乱の引き金へと変わってしまうのです

雑で とても手間がかかるのです。

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第4章
仕掛けのしくみ

“工程を進めるタイミング”の設計

かんばん方式の本質は「必要なときに 必要な量だけ」工程を進めることにあります。 
そのためには「いつ どのタイミングで工程を進めるか」を設計する必要があります。 
この“進めるタイミング”を決めるしくみが「仕掛け」です。
仕掛けとは 単なる指示ではなく 工程の流れを設計するための“タイミング制御装置”です。 
かんばんが出されることで工程が進みますが そのかんばんを“いつ どのように出すか”が仕掛けの本質です。
この章では 仕掛けの定義と種類 そしてそれが工程の流れと在庫に与える影響について整理します。

 

4.1 指示を出すこと=「仕掛け」

 

TPSでは かんばん方式において 指示を出すことを「仕掛け」と呼んでいます。 
仕掛けとは 工程に対して「今 進めてください」という信号を送る行為です。 
この信号が出されることで 前工程は生産や搬送を開始します。
かんばんが出されること自体が「仕掛け」であり それは工程を動かす“トリガー”です。 
逆に かんばんが出されなければ 工程は進みません。
このしくみによって 工程は常に「必要なときに 必要な分だけ」進むようになります。 
つまり 仕掛けの設計とは「工程を進めるタイミング」を決めることです。
このタイミング設計が適切であれば 流れは滑らかになり 在庫は最小限に抑えられます。 
逆に タイミングがずれていれば 流れは乱れ 在庫は膨らみます。


仕掛けの種類には 大きく分けて2つあります。

ひとつは「パターン仕掛け(定期仕掛け)」です。 
これは 時間を基準にして 品種ごとの生産枠をあらかじめ決めておき その時間が来たら 返却されたかんばん枚数に応じて生産する方法です。
もうひとつは「ロット形成(定量仕掛け)」です。 
これは 在庫や注文が一定数量に達した時点で かんばんを発行し 工程を動かす方法です。
どちらの仕掛けも 「必要なときに 必要な分だけ」動かすという原則に基づいていますが そのタイミングの決め方が異なります。
仕掛けの設計とは 単なる指示ではなく 工程の流れと在庫量を左右する“運用の起点”です。 
そのため 仕掛けの種類とタイミングは 工程の特性と需要の性質に応じて慎重に選ぶ必要があります。

花火

4.2 パターン仕掛け(定期仕掛け)──生産比率で時間を区切る運用設計

 

パターン仕掛けとは 生産数量の比率に基づいて 工程の稼働時間を区切り 品種ごとの生産パターンを設計する方法です。

生産比率に応じて時間を配分し その時間枠内で返却されたかんばん枚数に従って生産を行ない運用します。
この方法は 工程の負荷が安定している場合に有効です。 
時間で区切ることで 工程はリズムを持って進み 流れが安定します。
パターン仕掛けは「時間のテンポ」を守るための手段です。 
とくにライン生産や連続工程では このテンポが乱れると 流れ全体が崩れてしまいます。

パターン仕掛けの基本的なやり方は 以下の4ステップで構成されます。
・前工程が 定められた時間に造る品種を決めたパターンを準備する。 
・パターンは 生産数量の比率によって 稼働時間を分けて設定する。 
・その時間が来たら その品種のかんばんが返ってきた枚数だけ生産する。 
・その品種を造るために定められた時間が余ったら 生産を停止する。
このしくみによって 工程は「時間の枠内で必要な分だけ」進むようになります。 
余剰分を造ることはなく 流れのテンポを守りながら在庫を抑えることができます。
たとえば A部品が5 B部品が3 C部品が2という生産数量の比率で 1日16時間稼働する工程があるとします。 
この場合 各品種に割り当てる時間は以下のようになります。
・A部品:16時間 × 5/10 = 8時間 
・B部品:16時間 × 3/10 = 4.8時間 
・C部品:16時間 × 2/10 = 3.2時間

この時間配分に従って 工程は
・8時から16時までA部品
・16時から20時48分までB部品
・20時48分から24時までC部品
を それぞれの時間の枠内でそれぞれの時間枠内で返却されたかんばん枚数に従って生産を行い 時間が余った場合は生産を停止します。

 

このように パターン仕掛けでは「時間」「品種」「かんばん枚数」「比率」の4要素を組み合わせて 工程の進みを制御します。
かんばんを回す具体的な事例としては 部品供給工程と組立工程の連携が挙げられます。 
このように パターン仕掛けは「時間で進める」ことで 工程のテンポを守りながら 流れを安定させるための設計手法です。

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4.3 ロット形成(定量仕掛け)──一定数量(1ロット)に達したら生産指示を出す

 

ロット形成とは 一定数量に達した時点でかんばんを発行し 工程に生産を仕掛ける方法です。 
たとえば「注文が10個まとまったら」など 数量ベースでかんばんを出すしくみです。
この方法は 変動のある工程や多品種少量生産に適しています。
需要に応じて柔軟にかんばんを出すことができるため 過剰生産を防ぎながら 欠品も回避できます。

 

ロット形成は「必要量の証明」に基づいて工程を進める生産体制です。

工程は「必要になったときだけ」進むため ムダな作業や在庫が発生しにくくなります。
かんばんは ロット形成ポストに回収されます。 
このポストは 回収されたかんばんが1枚ずつ仕切りに沿って積み重なるように作られています。 
さらに 生産する品種ごとの1ロットが かんばん何枚分か一目で分かるように 仕切りの中に線が引かれています。
たとえば A品番はかんばん5枚で1ロット B品番はかんばん3枚で1ロットというように 品種ごとにロットの基準が明確に表示されています。
かんばんがポストに溜まっていき 1ロット分の枚数に達した時点で そのかんばん束が前工程に回されます。 
これが生産の仕掛け信号となります。
前工程では 帰ってきたかんばんの順番に従って 各品種の1ロットずつ段取り替えをしながら生産していきます。 
たとえば A品番のかんばんが5枚返ってきたら A品番の段取りを行い 5個だけ生産します。 
その後 B品番のかんばんが3枚返ってきたら B品番に段取り替えをして 3個だけ生産します。
このように ロット形成では「数量」「順番」「段取り」の3要素が連動して 工程の動きを制御します。
ただし この方法は タイミングが不定になるため 工程の段取替えのリズムが乱れやすくなります。 

 

ロット形成は「必要なときに 必要な分だけ」動かすという原則を守りながら 多品種少量生産に対応するための柔軟な仕掛け方法です。 
ただし その運用には 現場の理解と品種の段取り替えの実力を上げることが不可欠です。

ロット形成 (2).png

4.4 2種類の仕掛け方の特徴

 

パターン仕掛けとロット形成という2種類の仕掛けが存在するのは 工程の性質と需要の変動に応じた柔軟な運用を可能にするためです。
すべての工程が同じ仕掛け方法で動くことは現実的ではありません。 
工程によって処理能力が異なり 製品によって需要の変動幅も異なるため 仕掛けの方法もそれに合わせて設計する必要があります。
パターン仕掛けは「流れを守る」ための手段であり ロット形成は「在庫を抑える」ための手段です。 この両者を適切に使い分けることで かんばん方式は「流れ」と「在庫」の両立を実現します。
また 工程の実力が高ければ ロット形成でも流れを乱さずに運用することが可能になります。 
逆に 工程が不安定であれば パターン仕掛けによってテンポを固定し 流れを守る方が効果的です。
つまり 仕掛けの選択は 工程の実力を映す判断でもあります。 
かんばん方式は 単なる道具ではなく 工程の動き方そのものを設計する“運用思想”です。

 

パターン仕掛けの利点は 段取り替え時刻を固定できることにあります。 
これにより 段取り替えの重複を事前に回避することができ 効率の良い段取り順に固定できるため 生産効率が向上します。
たとえば 自動車部品の組立工程で A品番を午前8時から10時 B品番を10時から11時と時間枠で固定しておけば 段取り替えのタイミングが明確になり 工具交換や人員配置のムダが発生しません。
しかし 需要変動が頻繁に起こる場合には このパターンを組み替える必要が何度も発生します。 
たとえば 季節変動のある家電製品の生産では 週ごとに需要構成が変わるため パターンの再設計と段取り順の見直しが必要になります。

結果として 管理手間が増え パターン仕掛けのメリットが薄れてしまいます。
 

一方 ロット形成は ロットを形成する段階で生産のスピードが自動的に調整されるため 需要の変動がある場合に向いています。 
かんばんが返ってきたタイミングで仕掛けるため 過剰生産を防ぎ 欠品も回避できます。
たとえば 多品種少量の電子部品製造では 注文がまとまった品番だけをロットとして仕掛けることで 在庫を最小限に抑えながら 柔軟に対応できます。
ただし ロット形成では 段取り替えの時刻が不規則になるため 生産効率が落ちてしまう場合があります。 
たとえば 1日に5回以上段取り替えが発生するような工程では 人員の待機時間や工具の準備が間に合わず 流れが断続的になってしまいます。
このように パターン仕掛けとロット形成は それぞれ異なる強みと弱みを持っています。 
工程の特性と需要の性質を見極めながら 両者を適切に使い分けることが かんばん方式の本質的な運用設計となります。

2匹の犬
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